2004年3月31日の毎日新聞に、パプアニューギニアの不治の病「クールー病」についての記事が掲載されたことがある。
それによれば、パプアニューギニアの高地に住んでいるフォア族という民族では、かつて「クールー病」という病気によって、数千人が死亡していた時代があったという。
クールー病とは、手足が震え、方向感覚を失って歩けなくなる病気で、言語障害や痴呆になり、意識を失うこともある。約1年で死に至るという不治の病である。
この病気の研究に40年以上携(たずさ)わっている、マイケル・アルパース教授の調査によれば、クールー病の原因は、フォア族の風習である「人肉食」に深く関わりがあるという。
フォア族では、死者が出た場合、葬儀の参列者は死者の魂を慰(なぐさ)めるために死体の肉を切り刻み、それをバナナの葉に包んで焼いて食べるという風習がある。その際、女性と子供は脳と内蔵を食べることになっている。
教授の調査によれば、1957年以降クールー病で死亡した者2500人のうち、その80%は女性だった。そして18%は子供であり、成人男性は2%しかいなかった。
1950年代、この地を統治していたオーストラリアがフォア族に対し、人肉食をやめるように命じ、1960年以降、この人肉食の風習は消滅した。
そしてそれ以降、クールー病による死者はどんどん減っており、「人肉食とクールー病との因果関係は明らかだ。」と教授は語っている。
しかし、人肉食の風習が消滅して50年以上経っても、まだクールー病による死者は年間1人か2人はおり、この病気の潜伏期間は5年から50年と考えられている。
▼クールー病と狂牛病
クールー病の症状は、かつて問題になった狂牛病(牛海綿状脳症)に極めてよく似ていると言われる。
狂牛病ウイルス(BSE)に感染した牛の肉を人間が食べると、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になる。
この病気は潜伏期間があり、その後、視力障害が起こったり認知症になったりなど、脳の機能に障害が起こり、1年から2年で死に至る。
狂牛病の発生要因は、牛の骨や牛肉を粉にしたものを飼料に加え、それを牛に食べさせたことにある。つまり牛に牛を食べさせたわけである。
牛が牛を食べれば狂牛病、人間が人間を食べればクールー病と、同種族で共食いをした代償は、脳の機能障害から死という点で共通している。両者共に治療法はまだ見つかっていない。